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日露ITビジネスに懸ける想い

株式会社テクノソリューション 取締役事業部長 坂口憲一

はじめに

2019年9月21日(土)に北海道大学主催の「モスクワ留学フェア」が市内のホテルで開催され、日本留学を目指す多くの学生で会場は溢れていました。

 

23日(月)には「第2回日露大学協会総会(第8回日露学長会議)」および日露学生連盟による「学生フォーラム」がモスクワ国立大学で開催され、日露双方の大学教職員・関係者および学生が、積極的にプレゼンテーションや討議に参加していました。

 

25年前の1994年、私がサンクトペテルブルク国立大学に留学したときと大きく変わっていました。特に日露の学生達が、現状・課題・未来について語り合っているのを見て、羨ましい気持ちとともに、若い世代への支援が必要であることを感じました。これを機に「日露ITビジネス」への参入を決意しました。

日露ITビジネスの壁とIT教育の重要性

2018年に25年ぶりとなるロシア再訪を果たし、スコルコヴォ財団や各主要都市のテクノパークの他、現地の大学(IT・技術系)やIT企業等への訪問を重ねてきましたが、日露双方のITサービスや先端技術を紹介し合うだけでは、具体的なビジネスへの進展が難しいと感じました。日露双方で類似製品やサービスが既に存在し、また規制法令や商習慣等による市場への参入障壁があることが主な原因です。

 

そこで、私は日本のIT業界における社会的課題の解決に向けて、ロシアの優れたIT教育を活用できないかと考えました。経済産業省が実施した「IT人材需給に関する調査」によると、日本では現在、AI・IoT・Big data等の先端技術を担う「先端IT人材」が不足しています。私見ですが、その原因はIT業界における、①下請け多重構造、②客先常駐型の勤務形態、③スキル評価基準の複雑化、④IT教育の立ち遅れがあると考えております。

 

一方、ロシアではエネルギー資源への過度な依存から脱却し、「デジタル経済への移行」を掲げて「IT産業への国家的な支援」を急速に推し進めています。ロシアのIT教育レベルは非常に高く、それを示すように、2012年以降、国際大学対抗プログラミングコンテストでロシア代表が8年連続で世界第1位に輝いています。またロシアは、エンジニア輩出数でも世界第1位であります。

 

ロシアの高度なIT教育を日本に展開することで、我が国の社会的課題を克服しつつ、日露の経済交流を進展させることができれば、両国にとってメリットがあると考えています。

「ロシアIT教育エコシステム」の発見

ロシアにおけるIT教育の現状を調査するために、2019年9月から12月上旬にかけて、ノヴォシビルスク国立大学、ノヴォシビルスク工科大学、極東連邦大学、サンクトペテルブルクのComputer Science Center等を訪問しました。

 

今回の現地調査の結果、ロシアにおける「IT教育エコシステム」の存在を確認できました(下図参照)。ロシアではIT教育やビジネスを推進するにあたり、産官学が協力し、各主要都市にある先端技術開発特区(テクノパーク)で様々な優遇措置を受けながら、戦略的な研究開発やスタートアップ企業の育成・支援を進めています。この他に、民間企業や非営利組織が運営するIT専門の教育機関も多数存在しています。IT分野だけでも相当数の教育機関があり、その成果を競うことによって、教育予算の獲得やファンド等からの資金調達を行っています。

 

日本のように、教育機関と産業界が個別に実施しているIT教育とは大きく異なっています。私は、産官学が連携し、IT技術・市場動向・人材情報を共有し、成果と投資効率を重要な指標と位置づけながら、IT教育やビジネスを推進させるロシアの制度を「ロシアIT教育エコシステム」と呼んでいます。

図 「ロシアIT教育エコシステム」の全体像

また、モスクワ市立教育大学で日本語を学ぶ学生1名を弊社のインターン生として1ヶ月間採用しました。まずはスコルゴォ入居企業から購入したIT関連製品について、説明書およびスマホアプリの邦訳を行ってもらいました。つぎに、ロシアのIT教育制度と義務教育における学習内容(「情報科学」科目や進級試験、大学等への入学試験)について、日本語でレポートを作成してもらいました。

 

この調査結果をもとに、モスクワ市内にある教科書販売店(大規模な書店)に行き、「情報科学」科目のほぼ全ての教科書や参考書、問題集を購入することができました。最後に、非営利組織や民間企業で運営されているIT教育サービス(カリキュラムや学習内容、費用等)についても調査をしてくれました。なお、インターン生の作業はとても迅速で、レポートの内容にも満足しております。日本語を母国語とする私が読んでも違和感がない日本語レポートには、たいへん驚きました。

 

今回の現地調査を通じて、今後の日露間における産学連携活動の促進に向けた最初の一歩を踏み出すことができたと考えております。

日露ITビジネスの展望

当社では、これまでの事業化調査を踏まえて、以下の事業を進めています。

 

①ロシアIT教育ブログラムの日本展開

 数学的思考(アルゴリズム)をベースに、実践的なAI・ロボット工学の教育カリキュラムを日露大学との共同研究に基づいて開発します。ロシアへのIT留学(短期・長期)を通じて、プログラミング実戦能力および英会話能力を身につけます。

 

②ロシアIT人材の育成

日本のIT市場で即戦力として活躍できるように、優秀なロシア人エンジニアに対する人材育成を行います。具体的には、日本語以外にも日本の労働慣行・労働法規・経営管理などに関する講義の他、日本企業が進めるプロジェクトへの参画を想定して、開発現場で使う専門用語やドキュメント、開発手法について教育を実施していきます。

 

③ロシアIT企業とのオフショア開発・R&D受託開発

当社では、ロシアIT企業との独自ネットワークを活用して、ロシア語を話す日本人エンジニアがプロジェクト管理を担いながら、日本企業とロシアIT企業との橋渡し役を進めていきます。また、当社の研究開発サービスを活用して、日本企業では実現困難な研究開発についても、ロシア企業との連携によって、研究開発を受託することも可能です。

 

以上

 

【参考情報】

■テクノソリューション

■JETROによるインタビュー(地域・分析レポート)